コンブにラッコ。

今日も波間から 世界を眺める 

スパイダーマンは蜘蛛の巣を張らない。

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ネコがじっと壁を見ている。そんな時、ラッコは少しドキドキする。田舎の古い平屋に住んでいるので、ネコの視線の先に何がいるのか、確認したいような、したくないような気持ちになる。おムシさま。ラッコもなまこさんも、この方々があまり得意でない。

 

夏の間、頭文字「M」の細長くて百の足を持っていそうな御方を、ネコは親切に見つけてくれていた。もちろん見つけてもらった方が助かる。前に住んでいた家で一度、就寝中になまこさんがMの御方に噛まれたことがあった。その時は、慌ててネットで対処法を調べて事なきを得たが(いや十分事はあったのだが)、そうなる前に先手を打たせてもらいたいのがこちらの心情だ。

 

ラッコはMの御方が、虫の中でも本当に苦手だ。正式名をここに書くこともはばかられるほどの苦手ぶりだ。だから、なまこ家ではこの虫の名を略して「MD」と呼ぶ。しかし今この時点で何を指しているのか分からないと申し訳ないので、音が見えない漢字で、それは「百足」です、と書いておく。

 

なまこさんがMDに噛まれた時、劇的に効果のあった対処法は、噛まれた箇所をシャンプーなどで洗い、43度以上のお湯でしばらく流し続ける、というものだった。皮膚表面の毒を洗い流し、熱に弱い毒をお湯で分解するのだそうだ。なまこさんはこの方法でほぼ痛みが無くなったと言っていた。

 

全てのMD毒に効くのではないだろうし、アレルギーがある人もいると聞くので、本来は病院などで見てもらうのが最善だろう。ただ、なまこさんの時のような夜中の急場しのぎには、試してみる価値があるかもしれない。ちなみにその時のMDは、二人でギャーギャー騒ぎながら、ハエタタキにて、事態を収めさせていただいた。

 

家に入って来る、あるいは元から家に住んでいた虫を殺めるのは、完全に我々の都合なので、毎回複雑な思いがする。ただでさえ食べることでもお世話になる命、なまこ家では、防虫スプレーで外に予防線を張って、できるだけ家の中に入ってもらわない方向で対処させてもらっている。それでも、古い木造の家、なかなか難しくはあるが。

 

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都会でも田舎でもお目見えする虫の代表格は「GK」で間違いないだろう。これは正式名を書くまでもなさそうだ。黒や赤のハネを背中に持つ、あのスーパー足の速い族である。彼らに出会わない夏は、残念ながら、ほとんどない。わが家では、食べ物は全て「ジップ」するので、田舎の割には、かなり少ない方だと思う。

 

家が古いことと関係しているかは分からないが、今の家は引っ越した当初からアリが多かった。ラッコ的には、蟻は漢字で書いてもOK範囲だ。好きではないし、夏の対処にはほとほと疲れるけれども、音の響きはそれほどでもない。MDやGKは、正式名称を発音するだけでドキッとしてしまうのはラッコだけだろうか。

 

とはいえ、なまこさんとの間では「ARI(エーアールアイ)がいる!」と、敢えて元の「アリ」より長い呼び方で呼んでいる。出会った衝撃を和らげるためのクッションみたいなものだ。だから出会いたくはないのだが、ARIが家にいると、ものすごく掃除をするようになる。テーブルは拭き上げ、床も拭き上げ、ゴミは落とさず、食べ物はジップする。引越し前より家が片付いたし、おそらくそのおかげでGKもほとんどいない。

 

人間の生活に陰ながら役立ってくれる虫を「益虫」と言うらしいが、ウチではARIが、ある種の益虫なのだろうか。まぁ、害や益と呼ぶのはニンゲンの勝手で、どんな虫も生を全うし、今日の食べ物を探している存在たちだ。ARIの秩序立った行動、コミュニケーション能力と忍耐強さには時に驚かされ、呆れさせられる。

 

益虫、という括りで言えば、身近な益虫として、家の中のクモがいる。家にいるクモは、GKやハエを食べてくれているらしい。白黒ネコのモッツさんは、このクモを追いかけるのが好きで、それこそ壁を歩いているクモを飽きずに眺めていたりする。クモが床を歩けば、モッツさんはネコパンチで果敢に攻め入る。そんな時は「クモさん逃げて!」と注意を促すようにしている。

 

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茶白ネコのコブさんは、あまり虫が好きではないらしい。クモを見つければ見るし、壁に立って前足を伸ばしたりもするが、その肉球はクモに触れるか触れないかの所で躊躇している。体は大きくとも、心は繊細。基本的に眺めているだけのヒトである。

 

ここしばらく、足が長くて大きめサイズのクモが家に滞在している。どこから入ったのか知らないが、もう3日は家の中を徘徊している。モッツさんは今日も朝からコブさんと共に、壁のクモを、クモが照れるほど眺めていらっしゃった。首が疲れないかと心配になるくらいの斜め注視を察しているのか、そういう時はあちらもピタリと固まって動かない。どうやら賢いクモらしい。

 

なまこさんに聞いて知ったのだが、あのタイプのクモは、蜘蛛の巣を張らないという。家にいるGKを食べてしまえば、またどこかへ去って行く放浪の旅人。その名はアシダカグモ。どこのどなたの命名か、通称「アシダカ軍曹」と呼ばれる「GKハンター」らしい。姿に似合わず臆病で、人には近づかない。やはり賢明な御方だそうだ。

 

家のGKを捕食してくれるのは、人間側にとってはありがたい話。ただウチにはモッツさんという「GKハンター・ハンター」がいるし、さすがに夜の部屋でばったり出くわすと、ラッコも「うお!」と魚的リアクションをしてしまう。できれば早々に、満腹ご満悦になられて次の旅へ向かっていただけると、なまこ家もご本人も助かる予定である。

 

アシダカ軍曹、流れ者の、誇り高きスパイダーマン。お会いできて光栄でした。次はどこのお宅で人助けをなさるのでしょう。まったくもって、ヒーロー業は忙しい。

 

本日の一品 『 スパイダーマン(映画) 』

何度も映画化されているスパイダーマン。トビー・マグワイア主演のバージョンが懐かしい。ヒロイン役のキルスティン・ダンストとの組み合わせも好きだった。マーベルのアメコミヒーローたちの活躍、なぜか順を追って見てしまう。